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明日目が覚めたら 僕は

「秘密」二次創作サイトです

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いつか(4)

 05, 2018 00:15
「一也。まだつかないのか」


兄からは頻繁に電話がかかってくる。

「今すぐにどうのって話じゃないんだろ」

連日の報道でこの道はいつもより
渋滞でまるっきり動かない。

―――

「そこ、右曲がって。回り込んだら指示するから。
地下の関係者専門の駐車場があるのでそちらへ向かってくれ」

ハイヤーの運転手にそう言うと
彼は「大変ですね」と小さく嘆いてからスマートに右折した。

「あまり派手な格好してくるなよ」
と釘を刺されていたが、そう言われると
ムクムクと派手な格好をしたくなる。

誰が見てもわかるようなブランド物派手な
マフラーをぐるぐる巻きにして
叔父の病室に向かう。

病院の中にまで入ってくる馬鹿な輩はいないと思いきや
見舞客に紛れて一瞬、カメラのシャッターの音に
驚いて振り向くと、カシャカシャとけたたましい機械音と
光にロックオンされて立ち止まった。


「君、ここは立ち入り禁止だ」

そう言う俺の言葉など、まるで意に介さず。
笑いながら髭面の男は近づいて言い放つ。

「長町元法務大臣の後継者と言われていますが、
あなた結構えげつないことをして警察辞めてますよね。
そう言うスキャンダラスなのって致命的なんじゃないですかね。」

と悪意だけの言葉を投げつける。

こういう時のあしらいかたなど。
とっくに習得済みなんだ。


少しだけ一瞬うつむいて呼吸を整える。
そしてまっすぐにそのレンズの向こう側を見つめる。

少し困った顔をして。

そして俺は。無言でこれ以上ないほどに、
深々と頭を下げる。

「失礼」


そう言って。
エレベーターに乗り込んだ。

相手にするなと。
もう一人の自分がそう囁く。
――


2回ノックをすると
中から母の声がした。

「一也?」

「ええ、遅くなりました」
そう言って部屋の中に入る。

最上階のビップルームは。
病室どころか、
まるでスイートルームだ。
調度品の数々は華美にあらず、
落ち着きのあるもので揃えている。

窓の外には抜けるような青空。
大きな窓から見える景色は、
そのまま空につながりそうなほど
眺めがいい。

「一也こちらに」
そう促されてベッドルームに向う。

部屋の中には
叔父を囲むように
親族が集まっていた。

か弱い妻が叔父の横に座り
今にも倒れそうな様子で、
俺が部屋に来たとたん、
すがるような眼でこちらを見た。

「一也さん。待ってたわ」

そういう彼女の肩にそっと手をかける。

「では、皆さん」

そう声をかけたのは
叔父の長年の秘書で、
どうやら俺が到着したら
三人で話をしたいという叔父の
意向は俺以外皆承知しているようだった。


――

派手な服だな。

そう言って笑う叔父の表情をみて。
子どもの頃を思い出す。

「そう言えば、俺が小さいとき。
叔父さんが国会議事堂に連れて行ってくれたことがあったよね」

そう言うと、叔父はああ、と嬉しそうに笑った。

いずれ。
俺の跡を継いでくれるのは
一也だと思っている。

この言葉は何度言われたかわからない。
子どものいない叔父夫婦にとって。
俺は唯一の望みであったのかもしれない。

「一也さん。あなたは頭のいい人だ。
今。あなたが何をすべきか、もう十分にお判りでしょう」

スッと叔父の隣で立っているその秘書は。
大臣を歴任してきた祖父の代から関わりも深い。

「・・・あのさ。俺、ここに来たのはこの話を受けるためじゃないから。」
そう言いながら派手なマフラーを外して上着を脱ぎ棄てて
叔母が座っていた椅子に腰かける。

叔父は深いため息をついてうなずいた。

「昔のお前なら、受けていた話だと思ったが」

意外にも。
そう言って、叔父は寂しそうに微笑む。

「お前は。あのすみれさんと出会ってから変わったな」

それがいいのか悪いのか、わからんが。

そう付け足すのが叔父らしい。

「別にかまわん。マスコミにこいつが勝手に流した話だ」
そう言って秘書を恨めしそうに見つめた。

「でも・・。それではあなたの信念が」
悔しそうにあきらめきれないとでもいうように
秘書はぎゅっと拳を握っている。

「叔父さんは、なんでおじいちゃんの跡を継いだのさ」

長年の不摂生からか、たっぷりとした腹回りの叔父は。
こう見えて、学生の頃は各国を一人で貧乏旅行をして
めぐるほどで、いずれ海外で働きたいと思っていたらしいと
家族の誰かから聞いたことがあった。
祖父の後を継ぐ時もだいぶもめたらしい。

「俺がお前にこんなことを言う立場じゃないが。
悪い選択肢じゃないぞ。ただ理想だけのきれいな世界でもない。
そんなのお前なら十分わかっていることだろう。
だがな政治家だから実現できることがある。
変えることができる。動かすことができる。そして、救うこともできる。」


もしかしたらそれは。その言葉は。
叔父をその道に進ませた原動力だったのかもしれない。

「人は。良くなりたいと思って進むのが自然なのさ」

そう言うと。
叔父は秘書を仰ぎ見て言った。

「少し疲れた。休みたい。」

―――



叔父が息を引き取ったのは。
それから間もなくのことだった。



そして。

その10分後。


思わぬニュースが
飛び込んできたのだった。
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