FC2ブログ

明日目が覚めたら 僕は

「秘密」二次創作サイトです

Take a look at this

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  •   --, -- --:--

涙のあと

 18, 2017 01:07
「薪室長、神奈川県警より
捜査要請が来ています。お繋ぎしてもよろしいですか」

部下の一人が鳴り響く電話を取りつぎながら
ため息をついた。

今日はやけに電話が来るな。

ああ。室長室にまわしてくれ。

くぐもった声で薪はそう答えた。

―――

第九の朝は早い。

室長が研究所の扉が開く時間に
出社するものだから
部下の誰もが次第に出社時間が
早くなっていく。

「気にしなくていい。本来の時間に来い」
と本人は言うのだが、
いつもそこには薪と鈴木が揃っていて。
一緒に住んでいるのかと言うくらいの
タイミングで出社していた。


それなのに、今日に限って。
薪はぎりぎりで研究室に飛び込んできた。

少し紅潮した頬が
いつにもまして色っぽいと思った。

乾ききらないのか
濡れた髪がやけに艶っぽくて
部屋に入ってきた薪を見て
皆息をのんだほどだ。


め、珍しいですね。

そう言う部下に。

ああ。
すまん。こんな日に。
と薪は素直にうつむいて
答えた。


―――


「これからMRI捜査対象の脳が届く。
鈴木。法一の三好先生に資料を」

捜査員の前で薪はそう伝えると
緊張が走った。

第九が発足し、皆手探りの中で
必死になっていたころだ。

「ああ。室長、承知しました」

朗らかな笑顔で
答える鈴木に。


午後の打ち合わせは1時から始めるから。
それまで法一にいてくれ。


そう言ったのは。
昨晩のことがあったからか。

雪子さんへのせめてもの
罪滅ぼしのつもりか。


自分でもよくわからなかった。


―――

朝起きると。
鈴木はもうそこにいなかった。


昨晩のワインボトルはきれいに片されていて。
何事もなかったかのように
静寂としていた。


<先に出社する。ゆっくり来いよ>

そんなメモがテーブルに置かれていて
薪はバスローブのままソファに倒れ込んだ。

もし僕が死んだら。
昨夜のあの出来事が晒されるのだろうか。

そんなことをぼんやりと考えた。

目を瞑ると。
優しいキスと
激しい抱擁の
あの感触が
蘇ってきて。

胸が締め付けられた。



――――


「珍しいな。ぎりぎりで出社だなんて」

室長室で鈴木がそう話しかけてきた時。
お前のせいだと言いかけてやめた。

「ああ。それで三好先生は。」
何事もなかったようにこれから送られてくる
被害者の情報に目を通しながら薪は
冷静に問いかける。

「午後最優先すると言っていた。
こちらに来るのは4時過ぎだったな」

「じゃあその時間に法一に行ってくる」

じゃあ。俺も。
という鈴木に、薪は即答で
一人で行くからと返した。

二人きりの室長室で。
いつもの会話が空回りしそうで。
鈴木を部屋から追い出したくてたまらなかった。

二人きりでいることに。
とにかく今日は耐えられないと思った。


「薪。」

机の書類を見つめながら俯いていた薪に
鈴木は不意に声をかけた。


「また泊まりに行ってもいいか」

その言葉に。
薪は激しく動揺した。

そしてそれを何とか悟られないようにと。
敢えてまっすぐに鈴木を見つめる。


「いや。だめだ」


はっきりと。
そう言えたことに安堵し

小さなため息が漏れる。


「後悔・・・してるのか」

薪以上にまっすぐに見つめ返した鈴木の
その瞳に。

青ざめた自分が映る。

「仕事中だ。いいから戻れ」

何とかそう言えたことが。
今日の自分の精一杯だった。




スポンサーサイト

COMMENT - 0

WHAT'S NEW?

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。