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明日目が覚めたら 僕は

「秘密」二次創作サイトです

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ポールポジション1

 25, 2017 00:48

「たまにはこういうのもいいな」

忙しい恋人をやっとのことで
誘い出して。

助手席に座る彼女に優しく話しかける。
面倒な顔をしていた割には。
助手席から見える景色を興味深げに見つめている
その横顔をきれいだと思った。

白い肌と。
その細く柔らかな茶色の髪が
細い腕にかかる様は、
壊してはいけないもののように思えて。
近くにいるのに。
遠くから眺めているような気分になる。




-------―――


照りつけるアスファルトの世界を背に。
思い切って郊外に飛び出してきたのは正解だった。

休みの日なら渋滞のこの海沿いの道も。
夏休みの終わった平日の午後なら
割と空いていた。

こんなに空いているものなの?と
彼女は無邪気に笑いかける。

いや、普段は結構人気のエリアだから
車も電車も混んでるんだよ。

そう言いながら。
本当は・・・

渋滞でもかまわなかったのにと
いう思いがよぎる。

本当は・・

さりげなくその手を握って。
いつまでもこの狭い空間に彼女を閉じ込めておきたいと。
そんなふうに思っている自分がいることは。

気付かれたくない。

余裕のない男だなんて。
気付かれたくなかった。


「海の近くまで行ってみたいな」

そう呟いた彼女の言葉に。
少しほっとして、俺は近くの駐車場に車を停めた。

――――

「いつの間に持ってきたの。」

驚く俺に子供のように笑いかけた。
「だって。海のそばに行くってあなた言ったじゃない」

バックから真っ青のサンダルを出して履き替えると
すみれは無邪気に車から飛び出して
階段を駆け下りる。


ノースリーブの紺のリネンのワンピースの裾に砂がついても
気にする様子もなく。

嬉しそうに波打ち際まで駆け足で向かうのを
慌てて追いかける。

こういう時って。
二人でしっとり海辺を散歩するっていうのが
定説だろ。なんなんだよ。

ノーリードの子犬みたいに、
どこまでも駆けていきそうで
照りつける太陽がまぶしくて

自分の鼓動のリズムが
打ち寄せる穏やかな波の音の倍速で高鳴りながら

彼女が意外と走るのが早いことに
焦りながら、長町は必死ですみれを追う。

「わっ」

転びかけた彼女の腕を思い切り
引き寄せて
強く抱きしめた。


すみれ、危ない。


思わず。
名前で呼んでしまったことに
自分で驚いた。

やっと追いついて摑まえたその安堵感を
飛び越えるほどに。

―――

抱き締められたその腕の中で
すみれは深呼吸をする。


まだ。
まだ。


このままのポジションを装っていたい。

「いいんだよ。長町のこと。好きになっても」

薪にそういつか告げられた言葉は。
いつも自分の背中を押してくれているというのに。

この自信家の男の。

少しだけ。
ほんの少しだけの躊躇を私は知っている。

その踏み出せない何かは。
私たちの間に小さな線をひく。













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