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明日目が覚めたら 僕は

「秘密」二次創作サイトです

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sorry11

 12, 2017 00:59
「社長、お客様がいらっしゃってます」

珍しく雪が舞う銀座の一角にある
小さなジュエリーショップは
人が絶えない。


新作のネックレスのルビーの鮮やかさが
評判で年齢を問わず身に着けられると
いつも品薄状態だ。

―――

「今日は予約のお客様はいらっしゃらなかったはずだけど」

事務所で内線を受け取りながら
そう答えると、少し興奮気味のスタッフの声が
聴こえてきた。
「あの、そうなんですけど。
あの、あの俳優の白戸伊織さんが」

と上ずった声は嬉しさと興奮を隠しきれないといった様子だ。

「わかったわ」

とても断るなんて言えない雰囲気ね。
そう独り言を言って微笑みながらすみれは階下へ向った。

この街では芸能人が突然やってくることも
珍しくない。

―――



「別れてください。長町さんとは」


そう言われたのは1週間前のことだ。
彼を見てあの時のことが蘇る。

白戸伊織。
ああ、この人俳優さんだったのね。
ぼんやりと顔を見上げながら
始めてその素性を知った。


ロングコートを羽織って
マフラーを無造作に巻き付けた感じが
とてもこなれていた。

そしてそのマフラーは。
よく知っている人物のものだということも
分かった。


「すみれさん。先日のお話しの件。
 お返事をいただきに伺いました」

そう言って微笑む姿に。
周りの女性スタッフや顧客たちは
うっとりとした表情で見守る。


白い肌に、柔らかなウェーブがかった髪が
揺れた。
髪をかき上げるしぐさも、
神経質そうなその薄い唇も。
一つ一つの所作が品がある印象を受ける。
でも。
でも、そこに何か違和感を感じてしまうのは
なぜなんだろう。
すみれは一週間前の時と同じことを思う。

呼吸を整えてすみれは彼を見つめる。

「奥のお部屋でお話しいたしましょう。」
そう言って微笑みながら。


――


「いい香りですね」

スタッフが淹れた紅茶の香りを嬉しそうに嗅ぎながら
伊織はそう言って微笑む。


「エディアールのアールグレイなの。」
そう言ってすみれは同じように紅茶に口をつける。

「この部屋の調度品も素敵です。あの人はここには?」
当たり前のように「あの人」という言葉にも
すみれは心を静かであるようにと願う。


「ここには来たことはないの。女性ばかりで
入りにくいみたい。それより。」
そう言ってすみれは彼をジッと見つめる。


「ああ。返事を」

ソファにゆったりと深く腰掛けて
伊織は彼女の口からこぼれるであろう
差し出される言葉を期待して待つ。


「あなたの言い分はこうだったわね。
あなたはあの人のかつての恋人で、少し前に
偶然再会し、お互いまたかつてのような関係を望んでいる」


「ええ」

「Non」

顔色も変えずにすみれは伊織にそう呟いた。

「え?」

その言葉が信じられなかったのか、
もう一度返す。

「僕、言いましたよね。あなたが彼と別れなかったら
周りの人にもどんなことが起きるかわかりませんよって。あなた、息子さんがいらっしゃいますよね。
それもあの時伝えたかと思いますけど」

ムッとして少し早口の責め口調になった伊織にも
動じることもなくすみれはただ彼をジッと見つめた。

「あなたの望むものは何?
彼と共に生きること?だったら。彼もそう望んでいるのなら。そうしたらいいわ。
でも。そうしたいがために彼の周りの人を傷つけようとするのはどうして?まるで彼からすべてを奪い去りたいと思っているように私には見えるわ。彼を欲しているなら勝手に奪えばいい。
彼のことを愛しているのに、どうして彼を
傷つけるようなことをしようとするの?」

「これはあの人も望んでいることだ」
そう言う伊織の声は震えていた。
「僕を。僕を助けたいって。
あの人はそう言ってくれたんだ。」


「助ける?」

思いがけない言葉にすみれは
反応した。
ああ。私が感じていた違和感。
それは。
この人の怯えだ。
切羽詰まった顔をしていたのは。
何かに追われているような、
もしくは何かに脅されているような。

ああ、そう。そう言う表情だ。

「伊織さん。私がOui と言わなかったら。
あなたは私をどうするおつもりですか。
いえ、あなたではない他のどなたかが。」

そう言われて伊織は一瞬怖気づく。
おとなしそうな顔をして。
なぜこの女はこんなに前のめりなんだ。
自分や息子の身が危険な目に合うかも
知れないっていうのに。


「そんな冷静な顔をしてますけど、これを見れば、僕たちの気持ちもわかってもらえますよね」

伊織は封筒から一枚の写真をすみれに差し出す。
そこには、裸で眠るあの人の姿があった。

さすがに無言でその写真を手に取る。


「あの・・・」

とそのとき部屋の外から声が聞こえる。

「社長に伝言をお預かりしています」
スタッフがドア越しにそう話しかけた。

「ありがとう。入って」
その声に反応してドアが静かに開いた。

「社長、先ほどお電話がありましてその伝言です」
と小さな紙を渡されたすみれは
そのスタッフの顔を見て一瞬ぎょっとした表情をした。

「おきれいなスタッフの方ばかりですね」
と思わずソファに腰かけていた伊織も嬉しそうに
微笑む。


「ありがとうございます」
とにっこり微笑み返すその表情に
伊織はすっかり心をとらわれているようだった。


その栗色の柔らかなロングヘア。
その細いきれいな足。
少し薄い唇には薄いピンクの口紅が似合う。
黒いスーツを完璧に着こなし、
首もとには紫のスカーフが
花のように巻かれている。
そしてまるでハーフのような
その顔立ち。
白い手袋が唯一の男性らしさを
上手く隠している。

(薪さん??)

二度見したすみれに
その伝言を見るように促す。


(詮には青木がついてる)

書かれたその文字にほっとしながらも、
すみれは隣にいる薪のあまりの美しい
その女装姿に唖然としながらも
機転を利かせて言った。

「白戸さん、うちの副社長ですの。せっかくですので隣に座ってください。」

その言葉に薪は満足そうに
「ええ、では」と当然のようにソファに腰かけ、
言った。


「白戸さん。あなたのマンションからすでに押収されたものが見つかっています」
にっこりと。
その長いウィッグをたなびかせて薪は満面の笑みを浮かべた。











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