明日目が覚めたら 僕は

「秘密」二次創作サイトです

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予感15

 22, 2017 23:57
3年になる前の最後の春休み。
もう皆、実家に帰って
休みを過ごしているころだ。

鈴木は。
横浜の家族のもとに帰り、
妹の買い物に付き合わされて大変だというメールが
先日届いたところだった。

長町は。
家族でハワイの別荘で過ごすと休み前に
言っていた。




「で。なんでお前。ここにいるんだ」

そう声をかけたのは薪で。
気まずそうに笑うのは青木だった。


ーーー 


いえ、あの。
実家が今リフォームしていて。
バタバタしてるからちょうどいいから寮にいろと
直前にそう言われました。

とそう言って洗濯物を取り込んでいる。


それよりも。
薪さん、なんで荷物の整理してるんですか?

不思議そうな顔で部屋を覗き込む。



・・・留学を。

え?


・・・・ボストンに留学することにしたんだ。

顔も見ずに。
黙々と荷物を段ボールに片付けている。


その傍らには
スーツケースがやけに存在感を放っていて
みればもうほぼ用意はできている様子だった。


「そのこと、皆さんはご存知なんですか」
心配そうに薪を見つめながら
青木は遠慮がちにたずねる。


「ああ。知らん」


言えば面倒だし。
ああ、青木ちょうどいい。
下から台車もってきて。

キッチンでお湯を沸かす音がする。

ここに来た日。
この人は黙ってコーヒーを入れてくれた。
まだあれから1年も経っていないのに。

「コーヒー淹れて待ってるから。」
そう言いながら手を休めることなく
蔵書を一つ一つ丁寧に収めている。


――


・・・何にもなくなっちゃいましたね。
制服も。クリーニングに出して
そのまま返却したと聞き、
あああの姿をもう見ることもできないのかと。
青木は切なくなる


今日ここで寝て、
朝一の便で発つから。


「あの。薪さんご自宅には帰らないんですか」

そう言われて。
ああ。養父もなくなったし。
もう一人きりだからなと笑った。


ここが家みたいなもんだ。
そう言って窓をぼんやり眺めている。


「青木。これやるよ」
そう言って差し出されたのはブレード(剣)だった。

フェンシング続けるんだろ。
そう言って。
軽くブレードを振った。

あなたは。
そうやって。なんの痕跡も残さずにここを
立ち去るつもりなんですか。

いつもと違う、
青木のその強い口調に
振り向くと、青木の目から涙が溢れているのを見止めた。


「馬鹿、何泣いてるんだ。
別に今生の別れでもあるまいし。」

びっくりした顔をして後輩を眺める。


「あなたは。逃げるつもりなんじゃないですか」
そう言われて。
さすがに腹が立った。

「誰に、何に逃げるっていうんだ」

コーヒーをぶっかけたい衝動に駆られたが、
その瞬間、腕を強引に引っ張られ、
気がついたらベッドに押し倒されていた。


一瞬のその出来事に
まったく状況を飲み込めない薪に対して。


「さっき、管理人さんが帰りました。
部屋の鍵もかけてあります」



どういう状況かわかりますか?



「あなたを襲っても。だれも助けには来ない」

顔を真っ赤にして。
腕を絶対に離さないと言わんばかりに。
言葉はどれも強気なのに。
その表情は怯えているかのようにも見えた。


「どうしたいんだ」

冷静に見つめる薪に青木は一瞬ひるむ。
その隙に。
一瞬の隙に薪は腕を返し身体を翻して
青木の腕からするっと抜ける。
そして間髪置かずに
近くに落ちていたブレードを拾い上げ
気付くと青木の首元にその先は
まっすぐに刺さろうとしていた。

―――


「甘いな。」
そう言って。勝ち誇った顔をして薪はクッと笑った。

そしてそのブレードを放り投げると
青木の胸元にそっと身体を寄せた。

「脱げよ。したいんだろ」
そういう投げやりな態度を
この人はたまにとる。
それは大概ある人との関係に
悩んでいるときだ。


―――


恥ずかしがることもなく。
暗い部屋の中で服を脱ぐと、
「ちょっとかがめ」と命令口調で
俺の元にやってきてシャツのボタンを
一つ一つ丁寧に外す。

その姿は何か、大切な作業をしているかのように
真剣な眼差しで、思わずその顔を見つめた。


「なんだ。なんかついてるか」
そう微笑みながら
キスをせがむ。


「あの・・・俺・・・」

ああ、経験ないってことか。

「いいから黙ってろ」

言葉は男なのに
そのしぐさや唇の柔らかさも
何の違和感もなくそこに存在している。


ぎこちなく唇を合わせ
小さな薪の肩をそっと抱き寄せると

その冷たい体が全部の重さをかけて
俺の身体の上に覆いかぶさってきた。

慣れた様子で身体を動かすその姿は
煽情的で。
そして、ああ。この人は、
誰と何をしてきたかということも。
全てわかってしまう。

その想像だけで。
自分の今までの欲求が沸きだす。

「この人がほしい」
そんな気持ちに。
支配され、身体が反応するのがわかる。


「あの。なんで鈴木さんに言わないんですか。」

まぐわいながらいう言葉か?
そう呆れ顔で見ながら

言ったら。
決心が鈍る。

ちょっとだけ不貞腐れてそう言った。

「なあ。お前、こんなことしたいと思ってたの」
変な質問ばかりしている気がした。

それなのに。

「ええ。ずっと。あなたを想っていましたから」

としていることはぎこちないのに。
言葉はまっすぐに飛び込んできた。

いつもしている眼鏡をそっと外すと。
どことなく鈴木に似ているようで。
なんだいつもと一緒だなと
変な安心感に囚われた。


「俺のこと、あの人だと思っていいですから」


・・そういうの、やめろ。


「お前はお前だ」

そう言いながら。
薪は。
滑らかな肌を何度も合わせて
次第に息が上がっていくのが見てわかる。

ああ、気持ちいい・・・
そう言いながら、次第に声が声にならないような
嬌声に変わる。

あっ。ああん。
淫らな喘ぎ声が。
誰もいない寮に。
この部屋の一角にこだまする。


――

「俺も。行きます。」

明け方のまだ薄暗い時間の
まどろみの中で。
青木はそっとその髪に口づける。

「俺も。ボストンに」

だめだ。
ちゃんと卒業しろ。

そう言ったあとに。
薪はぼそっとつぶやく。


「お前が。今日ここにいてくれてよかった」


そう言って。
静かに目を閉じて。
天使のような眠りにつく。


―――




・・・・


薪さん?薪さん?


「今日は早くに現場にいくって言ってましたよね」隣の大きな男がそう言って僕を揺さぶる。

なんだ?
おれはこれからボストンに・・・
と独り言をつぶやいている薪を見て
青木は微笑んだ。


「薪さんも寝言を言う時があるんですね」

そう言って。

目が覚めると。
そこは。いつものベッドで。


「ああ。夢か」


ずいぶん長い夢だった気がする。


「夢を見ていたんですか」
隣で嬉しそうに薪を抱き締めながらそう呟く。

「ああ。」


なんだろう。
すごく幸福に満たされているそんな
夢だった。


そういうと。
青木は嬉しそうに微笑む。

「きっと一緒に寝たからですね」


ああ。
そうだな。

と微笑み返す薪が。
ふと見た青木のその首元には。


何かで刺されたような赤いあざが見て取れた。

ハッとして薪は青木を見上げると

「ああ、これ」と指をさして
朝起きたらついてたんですよね。
と笑った。




あれは。

夢。

それとも

現実

過去

未来


それとも。


(fin)





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COMMENT - 2

Fri
2017.02.03
01:59

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Fri
2017.02.03
22:45

柏木 けい #-

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Re: 幸せな学生時代

S様。コメント嬉しいありがとうございます!
私も雪子さん素敵だと思っているのでそう言っていただけて嬉しいです。

「摩利と新吾」という漫画が大好きだったのでその時の漫画を思い出して
書きました。

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