FC2ブログ

明日目が覚めたら 僕は

「秘密」二次創作サイトです

Take a look at this

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  •   --, -- --:--

予感5

 17, 2017 23:44
入学してみれば。
当初の憂鬱さは消え去っていた。

それはこれ以上ないほどの
充実したカリキュラムと
全寮制という密度の濃い
人間関係の構築の賜物に他ならない。

閉ざされた生活。
しかしそれはそこにいるものにとっては
ある者にとって楽園であり、
またある者にとってはシェルターであり、そして
またある者にとっては「すべて」となる。

まるで英国さながらの瀟洒な建物。
まるでハリーポッターのような世俗から隔離された世界。

青春とは。
過ぎ去ってみたときに
俯瞰して初めてこういうものだと理解できるもので、

失ってみて初めて
狂おしいほどに手に入れたいものとなるのだと。

その真っただ中にいるときは。
そこからただただ早く逃げ出したいと思う。
達観できないことこそ
青春だ。


今思えば3年間。
たったの3年間だ

その3年を。
色濃く過ごすことができたのは。
幸運以外何物でもない。

―――


僕たちの寮生活は
初日にひどい目にあったこと以外は
全てうまくいっていた。


それはきっと。
気がつけばいつも
近くにいるこの二人のおかげだと
思っている。


僕らは運命共同体のように。
あの日の夜から
行動を共にするのが当然のようになった。

まるで不本意だが
彼らは僕を守ることを使命だと思っている節がある。

僕はそんなことを期待してもいないのに。
僕は守られたくなんてないのに。

ただ。
鈴木の屈託のなさと。
人を惹きつけるその人間性は僕にないものだし。

長町のその積極性と
物おじしない育ちの良さは見ていて気持ちがいい。

相変わらずの定期試験は。
全校集会でランキングが読み上げられる習慣が続いていて。
僕らは常にそこから陥落することもなく貪欲に学ぶ時間を
存分に楽しむ。

そもそもここを選んだのは。
格式なんかどうでもよくて。
僕にとっては、優秀な教師陣から学べることが
一番の魅力なのだ。

養父の澤村さんの強い勧めで
この学園に入ったが、
それには彼なりに僕を想ってのことだということも分かった。

一流の作法。
一流の環境。
一流の教師陣。

イートン校とはそれこそ比べものに
ならないが、魅力的な学生たちが伸び伸びと育つ。
そういう学園だ。

―――


2年になったその年の春。
春休み明けのある日のことだった。

寮の中庭にだれかが紛れ込んだらしかった。



僕はいつも朝早く起きて
カフェオレを飲むのが日課で。
その人影を見て、見覚えがない奴だなと思う。

気になって窓からその中庭を覗き込むと
背の高い、眼鏡をかけた学生が佇んでいた。
右手に黒い布を持っているところを見ると
ここの特寮生かと、推測する。

きょろきょろして誰かを探している様子は
なんだか初々しいなと思って思わずくすっと
笑みがこぼれた。
その瞬間、
コーヒーカップがその瞬間窓ガラスにカチャっと
当たる。

あっ。と思った時には。
すでにそいつにロックオンされてしまった。

しっかり目があった僕に
笑顔で手を振っている。

慌てて「下に降りるから」というジェスチャーをすると
彼は心からほっとした顔をした。

まだ5時。
皆が寝ているような時間だ。

そっと部屋を抜け出し、
中庭に抜けるドアを開けると
彼がまるで忠犬のように待っていたので、
また笑ってしまった。

「新入生?」

「ええ。福岡から来たんですけど。
早く来すぎちゃったみたいで・・」


まあ、とりあえず入れ。
そう言って、僕は自室に彼を向い入れた。


「7時には寮長も起きるから、
そうしたら案内する」

そう言われて「はい」と小さく返事をした。
俺は、まだ寒い外から、やっと建物の中に入れた安心感で
ため息をついた。

そして、やけにテキパキといろんなことを
教えてくれる初対面の人をじっと見つめた。

自己紹介も何も言わないまま。
その人は部屋の小さなキッチンでお湯を沸かしている。


「そのマント。」

「え?」

「君、この寮に入るんだな」
そう言ってカフェオレを差し出す。

ああ、そうなんです。
父も母もとても喜んでくれて。
眼鏡の奥の瞳がきゅっと嬉しそうに動いた。

へえ。
いい家の子なんだな。

そう言われてメガネの男子は首を横に振る。

「いえいえ、俺は特待生扱いで。
成績だけで取ってもらった程度です。
ここには名家の子息が集まるから
大変だぞと先生にも言われてきたんで、、
すごい緊張してたんです」

でも、あなたが気付いてくれて よかった。
そう笑う。

薪はずっと。
何かに囚われたようにじっと
その彼に見入る。

「君、名前は?」

「あ、青木、青木一行と言います」

そう言いながら深々とお辞儀をして見せた。

スポンサーサイト

COMMENT - 0

WHAT'S NEW?

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。