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明日目が覚めたら 僕は

「秘密」二次創作サイトです

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kiss kiss kiss 4

 30, 2016 23:39
「薪さん、こんなお店で飲まれるんですね。」

あまりなじみのない街の
住宅街のとある一角にその店はあった。

タクシーで慣れた様子で
場所の説明をしているところをみると
よく知った店であることが感じられた。


「ああ。」
と小さくうなずいて薪は
すたすたと地下への階段をおりていく。


「いつもの部屋に」

そうマスターに伝えると
細身の男性が
どうぞ、と促す。


小さなドアから
入っていく薪。
だいぶ頭を縮めて青木も
それに続いた。


そこは
本当に静かな個室となっていて
オーダーも備え付けの内線で呼ぶシステムのようだった。

最初のビールに口をつけてから
薪はやっと、一息ついた。



「ここは。」


ここは完全な個室となっている。
プライベートを知られたくない
要人もここの店を使うらしい。

と薪はまるで事件の概要を説明するかのように
淡々と話す。


「すごいですね。会員制ってことですか」


「ああ。・・・ところで青木。
舞ちゃんは元気か。」


思わぬ話題に青木は
拍子抜けする。

こんな完全な個室に案内されて
何か大切な話でもあるのではないかと
思うのは当然のことだ。


それなのに、
今の薪さんはプライベートの顔をして
俺のそばにいる。



「ええ。以前薪さんがうちにいらっしゃって下さってから
だいぶ経ちましたが、最近学級委員になったらしくて、
張り切ってましたよ」


「へえ、そうか」


と嬉しそうに頷く。


「最近どうだ。仕事以外で何か変わったことはあったか」


「仕事以外で、ですか?」

なんだか、いつもの薪さんから
発せられる質問とあまりにもかけ離れていて、
調子が狂う。


「そ、そうですねえ。なんだろう。
母も健在ですし、舞も変わらずです。」

話しながら、薪さんが
俺のことをじっと見つめている。
そう思うだけで。
脈拍が上がりそうだった。

なにより。
その
上目づかいで
じっと見つめられると。
・・・・心臓に悪い。


「薪さんって。すごく見てますよね」

えっ?

ふいにこちらに話をふられて
薪は動揺した。



「以前から思ってたんですけど。」

朗らかに微笑みながら
青木はそう言った。


「失礼します」

とドアの向こうで声がした。
店員が料理を持ってきたらしい。

目の前に並ぶのは
素朴な和食の料理の数々。


とりあえず食べろ。

そう言って薪は
青木を促す。


素直に目の前の煮つけに手を伸ばすと、
その味の繊細さに驚いた。


「僕の話をしてもいいか」


と、気がつくと片手に冷酒の薪さんが
目の前でそう呟く。


この人が。
自分のことを打ち明けることなんて。
今までなかった。

一度たりとも。

それなのに。



――――

警察庁に入って。僕には
尊敬している上司がいる。
もう、退官されたが、杵築長官だ。


と言われ青木はえっと小さく声をあげた。
その名前を聞いただけでも緊張するような。
そういう人だ。


長町も同じころ彼の下で
働いていて。

まだ若いころの話だ。

警察官として。
そしていずれ歩む道の向こうに
この人がいると信じて。

僕は彼に心酔していた。
それほどに。
彼は人格者で、だからこそ、
長官の職に就いていたのだと思っている。


その彼に。
先日言われたんだ。


「何をですか」


「お前は。青木をどうしたいのか。と」


どうも僕は
お前を特別扱いしてしまう。

他のメンバーも変わらず
同じように接していると思っていたのだが。
客観的にみると
明らかに違っているらしい。

お前に対して、
私情を入れすぎだと言われた。



ちょっと拗ねたような表情で。
そう言う薪さんに俺は言った。


「あ、でもそれは。俺が未熟なところが多すぎて
手のかかる部下だから・・だと思ってました」



「そうだ。そのとおりだ」

とたまにはいいことを言うじゃないかと
言いそうな顔で薪は顔をあげた後
深くうなずく。


「だが。それだけではない。
僕は確かに長官が言う通りお前に対して
私情を持ち出しているのかもしれない。
僕は。お前を・・・」


え、お、お前を?


「お前を、育て上げたいと思っている。」


お前を・・・って言われたら。
次にくる言葉って限られるから
期待してしまった・・・。

一人赤くなっている青木に
薪は「おいこら、きいてるのか」と
ムキになっている。


「お前を育てたいと思う僕の気持ちを
受け止めるなら。とことん関わるつもりだ」


だが。

「お前が甘い気持ちで、俺のそばにいるなら。
僕かお前のどちらかが異動だ」


「どうする。青木。
一度しか言わない。
僕はお前に期待している。」


賽は投げられたとばかりに。

そう見つめる薪の瞳は。
答えの選択肢などないと語っている。
もう逃げられないのだと。

覚悟を決めろと。
そういう顔で俺を見つめていた。


この美しい人は。
どこまでも容赦ない。

青木は。
無言のまま。

頭を下げた。



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COMMENT - 2

Sat
2016.12.31
22:52

 #

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Edit | Reply | 
Sun
2017.01.01
20:03

柏木 けい #-

URL

Re: 青木をどうしたいのか

S様、厳しい中にも薪さんの愛情があるって
青木君にも伝わっていてほしい・・・です。

コメントをいただくと
嬉しくてやる気がぐーんと増してきます。

こちらこそおいでいただきありがとうございました。

今年もよろしくお願いいたします!

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