明日目が覚めたら 僕は

「秘密」二次創作サイトです

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探し人

 30, 2016 00:04
「薪所長なら先ほどお帰りになられましたよ」

第8管区の部下が
笑顔でそう受け答えた。

「え、何分くらい前?」

そうですね、10分くらい前かな。
現場から戻るのに、
ちょっとだけコンビニに寄ったことを
これほど後悔するなんて思わなかった。


「何か言ってなかったか」

そう些か詰め寄ると
部下の一人が
「室長のお部屋でしばらく待っていらっしゃったんですけどね」
と答えた。


「それにしても、本当にあの方、
異常に若いですよね」

「いや、若いだけじゃなくて
なんていうか・・麗人だよな」

と周りはまるで芸能人に会ったかのような
騒ぎようで。


「ちょっと外に出てくる」

帰ってきたばかりなのに、
コートも脱がないでまたすぐに
駐車場へ戻った。


(まったく。
いきなりやってきて、すぐいなくなるなんて)


薪さんが自らこちらに来ることなど
非常に稀なことだ。


だからこそ。
このチャンスを逃したくないと
思ったのに。


(ああそうだ!携帯!)


すぐさま電話をすると
意外にも早く返事が返ってきた。


「薪さん!こちらにいらっしゃったと」


「ああ。お前の上司に用があってな。
でももう用件も済んだしこのまま東京へ帰る」

こっちは慌てて息も上がっているというのに。
彼の声はいつも以上に冷静で
落ち着いていた。


「あの、そんなこと言わないでください。
今外に出てきたんです。少しでもいいので
お会いしたい・・」


いや。
今日はもうこのまま帰る。


そう言って薪は
次の青木の言葉を聞く前に
携帯を切った。



はあ・・・・。



少しだけため息をついて。


「次・・・いこ」

独り言をつぶやいて。


―――


「え。薪さんが来たの?」


帰宅した青木を待っていたのは。
母の意外な言葉だった。

2階では舞が大きな声で
歌っている。


ご機嫌な証拠だ。


「え、なんで」


職場でも同じような会話をしている。
まるでデジャブのようだと思った。
なんて日なんだろう。


「こちらに仕事で寄ったので
お線香をあげさせてくださいってね」


すごくきれいな人だねえ、
相変わらず。


いつもは辛口な母も、
薪さんにはとても甘い。


それでね。
これをって・・。

こたつに座りながら
母が仏壇の近くに置いてある
紙包みを指さした。

上品な包み紙ながらも
華やかなピンクのリボンが
纏われたものだった。


「舞へ渡してくれと」」


お前が来る前に開けては
いけないと思って。


「ああ、そうなんだ。
じゃあ、舞を呼んでくるよ」


そう言って青木は二階に上がる。

「舞、ちょっと降りておいで」

そう声をかけると
嬉しそうに返事をして軽やかに

「うん、こうちゃん今日ね、薪さんが
来たんだよ」
と振り向きながら
笑顔でそう話し出す。



なんだか。
俺以外の
みんなは
薪さんに会ってるなんて。



すごく複雑な気持ちだ。
そう思いながら、
苦笑いで舞の嬉しそうな顔を見つめる。


―――――


「わあ!素敵」


包み紙をきれいにはがして
箱を開けると
そこには
ポンチョ風の可愛らしい真っ赤なコートと
真っ白な手袋が入っていた。

「あっ」

そのコートを取り出した拍子に
何かが落ちた。

それは小さなカード。

見慣れた丁寧な文字で
「お誕生日おめでとう」
と書かれていた。

舞はぎゅっとそのコートを抱き締めて
顔を紅潮させていった。

「こうちゃん、舞ね、こういうお洋服ずっと欲しかったの」

貸してごらん。
そう言って青木は
舞にそのコートを着せ、手袋をはめるのを手伝う。


「まあ、可愛らしい」

母が思わずそう呟く。
真紅のポンチョを纏った舞は
まるで淑女のようで。

「小公女みたい」と
最近大好きな絵本の主人公に
なりきってクルクルと回りながら
こたつの周りを踊る舞は本当に
可愛らしかった。


――――


まさか、帰れなくなるなんて思わなかった。
予定していた便もほかの便も
取れないなんて。

まあこれだけ吹雪いていたら無理もないか。

薪は頬杖をついて
今日の宿泊先のめどがついたことに
ほっとしながらガラス越しの福岡の街を眺めた。


ふと。

メールが1通入っていることに
気付いた。

福岡の賑やかな通りに面した
有名なコーヒー店で
シンプルなコーヒーを片手に。

きらめくイルミネーションを見つめながら
薪はそっとその画面を見つめる。


そこには
真っ赤なコートを着て
嬉しそうに手を振る舞の姿の写真があった。


<薪さん、ありがとうございます。
舞がとても喜んでいます。お心遣い感謝いたします>

満面の笑みを浮かべる舞。
そっと画面の写真をなでながら。


これは。
贖罪なのか。

僕の青木への想いが
彼女を不幸にしてはいないかと

僕は。




<薪さん。それから・・・>


ん?


<あれ。
薪さんですよね。室長室の机に貼ってあった付箋。>




ubivis



―――


「まだ大丈夫ですか。」

一人の男が力強く
店のドアを開ける。

彼が店に入ると
外の吹雪も一緒に流れ込んできた。

白い粉のような雪が暖かな
店の中で舞消えた。

「ええ」

「じゃあ、これを一つ」

「お席は」

ああ、大丈夫。
あそこに待ち人がいるので。


背の高いその客は
人のよさそうな笑顔でそう言った。


窓際のカウンターで
今まさに。
スマホの画面を覗き込んでいる
あの人のもとに。







――――

ubivis(ラテン語)

意味:どこにいても気持ちはそこに






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