明日目が覚めたら 僕は

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クリスマスツリー

 23, 2016 23:12
「もう。離れるな」

僕から離れるな。
彼は余裕のない表情で
再度小さい声でそう呟いた。



「それは・・・上司としての命令ですか」

青木は静かに答える。

晩秋の夜はとても冷たかった。
都会のアスファルトの硬い無機質な道は
果てしなく続いていて終わりなどない。
どこまでも歩み続けなければならないのだ
そうでないと。
安住などできない。

僕らの事情など知る由もなく
タクシーがいくつも通り過ぎていった

「離れるな。と言いながらも、あなたは。」


あなたは。



「あなたは、俺を必要などしていないじゃないですか」

いつも。
あなたを追いかけて。
あなたのそばに居たいのは
俺ばかりで。


あなたは
敢えて避けるように
いなくなってしまうくせに。


「薪さん。ずるい人だ。あなたは」


いつもの優しい微笑みは
封印されたまま。
目を伏せながら青木は
眉を寄せて 
吐き捨てるように言った。


そんな彼を。
薪は震えながら見つめる。

今まで。
向き合ってこなかった
罰だと。

そうだとしても。
僕はもう。


「そんな顔で見つめないでください」

青木は根負けした顔をして
ため息をついた。


歩きながら話しましょう。
そう静かに青木は促す。

自然にそうエスコートする青木の声に
救われた気持ちになって
余裕ない自分には
心地よく響いた。

「だいたい。結婚しろと再三言い続けたのは
あなたですよ。薪さん」


黙って隣に立ったままの薪は
その小言を受け止める。


少し俯いて
上質な紺のカシミアのコートのポケットに
手を突っ込んだまま歩く姿は、
通り過ぎる人も振り向くほど相変わらず
美しい。

ハーフのモデルじゃないのかと
先ほども女性の二人組が囁きながら
通り過ぎていった。


「本当にそう思ったんだ。
お前にはそういう人が必要だと。」

「薪、、」

青木が言いかけた言葉を遮って
薪はさらに続ける。

「だが」

少しだけ。
口惜しそうに薪は
唇をそっと噛んだ。

「だが。無理なんだ」


足を止め、青木を見上げて
潤んだ瞳は都会のイルミネーションを
全て吸い込んでしまったように輝いていた。

思わずその表情に
青木は息をのんだ。


薪の震える唇は。
次の言葉を紡ぐことを
ためらいながらも
静かに決意をもって。
青木にそれは
確実に届くようにと。


「お前をもう。誰にも渡したくない」


あんな想いはもう。
二度としたくない。

震えた声が
彼の心の内を表しているのだと
感じた。




「わあ、きれい!」
ふと後ろのカップルが
そう声をあげた。

ハッと薪と青木は
目の前を見上げる。



「点灯したんですね」


華やかで
暖かくて
眩くて

僕らは一瞬目の前のツリーに
目を奪われた。

「ああ。気付かなかった」

苦い顔をして薪は
笑った。
ちょっと救われたような顔をして。



この俺の上司である
この人は。
気付いているのだろうか。


目の前の
この華やかな
ツリーよりも
何よりも
彼自身が
美しく
麗しい
ということに。

そして
こんなにも
脆くて
儚げな
表情をして

俺を虜にする

ということも。

「・・・・もう。断っていました」

ツリーを見上げながら。
青木は独り言のように
呟く。


「初めから。
あなた以外の人は。
俺が無理でした」



・・・早く言ってくれ。


気付くと隣の薪が
しかめっ面をして俺を見上げていた。

「いえ。言ったらこんなあなたを
見れなかった」

青木はしたり顔で笑う。

「わっ、薪さん!」
グーで殴られそうになったのを
寸でで止め、青木は余裕の笑顔を見せた。


悩んだのに。
必死の想いだったのに。
口惜しい気持ちでいっぱいになったが。

なぜか少しだけ。
本当の自分の気持ちが
伝えられたことに
ほっとしていた自分もいた。



「ふん。帰るぞ」

いつもの命令口調すら
お可愛らしく聞こえる。


「ええ。」


「青木。タクシー拾え。」

「ええ」

「・・・ボソッ」


「え?何か言いました?」


「お前には参った」

ため息をついた後。
そう言って長い前髪をかき上げ
笑う彼。

ああ。
この笑顔を。
ずっと



「ずっと。
独り占めしたい。」

「えっ」

隣でそう呟かれた
青木は観念した表情をした。


この可愛らしい人には。
ずっと
ずっと敵わない。

参っているのは。

最初からあなたに
参っているのは。


俺だ。
僕だ。










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COMMENT - 2

Tue
2016.11.29
06:40

 #AZ9M9aig

URL

更新を待っている間に、また最初から読んでいました。やっぱりステキな世界観ですね、美しい景色が浮かんで……ホント、ステキ♡

Edit | Reply | 
Tue
2016.11.29
20:43

柏木 けい #-

URL

Re: タイトルなし

わーん、コメントありがとうございます。
そう言っていただけて嬉しい。
私の思い描くものを
共有してくださることに感謝です。

甘々な二人を書きつづけたいと思う
この頃です。

Edit | Reply | 

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