明日目が覚めたら 僕は

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タナトス

 15, 2016 23:51

「あいつに殺されたい。」
ずっと否定してきた。
閉じ込めてきた想い。


「それは。
愛に他ならない。」

と白衣を着たその男性は冷静にそう呟いた。



白い四方の壁に囲まれてた部屋。
寒々しく、彼の言葉がやけに冷たく響く。
愛という言葉が他人事のように思えるほどに。





警視総監の命令で
義務付けれられている
カウンセリングだが、
精神科医は常に穏やかで
僕自身にとっては
事件から離れて自分を
そして周りを
俯瞰してみる時間でもある。
それほど嫌いな時間ではない。

あの警視総監にしては
気の利いた命令だとおもう。

そうは言っても。


守秘義務のある
ここでのカウンセリングだが
警視総監へ逐一報告がされていても
おかしくない。もしくは研究の治験者として
使われているやもしれない。


それなのに。

―――

「心配なさらないでください。
ここでの話は他言いたしませんから」

そう言って白湯に近い薄味のハーブティを
差し出される。

「フロイトの心理学では。
殺されたいと思う心理は、自分のすべてを奪ってほしいという欲求でもあるといいます。」
と微笑む。


「あいつ」という人があなたにとってどういう存在か、
どういう関係性かは知りませんが。
と言いながらカップにそっと口づける。

この医師はまだ若く
そして何かを達観したようなふうでもある。


「物騒な言葉だと。思われないのですね」
と薪は意外そうな顔をした。


ええ。
とその精神科医は静かに微笑む。

だって。
あなたがそれを言葉にした時の
恍惚としたその表情は。
まるで。

恋をしているかのような。
そういう表情でしたから。



気が付くと白い壁には夕日の暖かな影が広がる。
柔らかなその風景に。
心が揺さぶられた。

愛する人に殺されたい。
麻薬のような甘美なその響きが。

妙にしっくりきて。
ああ。
これは。

愛なのだと
そのときストンと
胸の痞えががとれた。



――――

あの人は。
最後まで。
俺と一緒に戦ってくれる人なんです。

青木はそう呟く。


この人さえ一緒に戦ってくれていれば。



絶対的な信用
そして希望。

――――



「薪さん。起きてください。」

柔らかな緑が茂るその研究所の中庭で。
ためらいがちに言葉をかける彼の
その表情を。
想いながらまた少し眠りにつく。

穏やかな微笑みで
彼は隣に座り

何も言わずただ。
その場所で柔らかな日の光を
まぶしそうに眺める。

そっと。
ためらいがちに
眠ったその人の指に
薬指を絡めながら。




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