明日目が覚めたら 僕は

「秘密」二次創作サイトです

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同級生

 12, 2016 22:00
「長町。薪見なかったか」

そう聞かれてつい
「さあ、知らん」
とつい知らぬふりをしてしまったのは
なぜだろう。
鈴木は、疑う様子もなく、
「そうか見かけたら俺が探していたと言ってくれ」
とそう言って、寮へと戻っていった。

あれほど仲がいいのに。
居所もわからないなんて。

その点、俺は・・・。
とついそう思ってしまう。

寮から少し離れたところに
射撃場がある。


薪は最近ずっと授業が終わると
この射撃場を予約していて
取りつかれたように訓練を続けているのだ。



俺の最近の日課は。
その様子をそっとうかがっていることだ。
ストーカーじみた行為だと我ながら思う。

だが、数人に交じって
先ほどから目の前の標的に射撃を
無心に続けている薪の腕前は、
おそらく同期の中でもずば抜けていると
俺は思う。

射撃は何よりも集中力がものをいう。
何を考えているのだろう。
否むしろ今は
何も考えまいとして。
ここにきているようにも思える。

―――


「嘘つきだな、長町は」
そう言って隣にやってきたのは
先ほど別れた鈴木だった。


「ああ、すまん。偶然見つけたんだ」
とわざとらしくそう答えると、
鈴木は少し不機嫌な顔を露わにした。

あいつは。
なんで警察庁に入ったんだ?
と長町は鈴木に尋ねる。

身体も小さいし、これだけの体力勝負の
仕事だ。俺たちよりきっとキツいだろうlに。
官僚になりたそうなタイプでもないし。
医者や研究者のほうがよっぽど向いている。

そう長町が言う。

それに対して鈴木は静かにつぶやいた。


「使命なんだ」

あいつの。
あいつだからできること。
あいつしかできないこと。
そういう使命がここにはある。



おれは。
あいつのそばにずっといることを
決めているんだ。


「へえ。それは。
どういうポジションで?」
と長町は興味深いという顔つきで彼を見入る。


「ポジション?」

ああ。
怪訝そうな顔をして鈴木は隣の
同期の黒縁メガネの奥を見入る。


友人に決まってるだろ。
と何当たり前のことを、
と一蹴した。


それを聞いた長町は苦々しい
顔をしながら一言口を開いた。



「へえ・・・
薪も不憫だな。」



しっかりと聞こえているくせに。
鈴木は聞こえないふりをして薪を見つめている。

外野は黙ってろってことか。


ふいに俺の質問には答えないくせに。
鈴木は突然不思議そうにつぶやいた。



なあ、長町。
この間なんでお前の部屋で
あいつは寝てたんだ?


―――


「鈴木!また着替えもせずに眠って」

警察庁に入庁してすぐに、
僕たちは警察学校で厳しい訓練を
受けている。
数か月に及ぶ寮生活。

教練が厳しすぎて部屋に戻ると
そのまま倒れこむように
同室の鈴木は
眠ってしまうことがいまだにある。


そんなとき。
ベッドで横たわる鈴木をそっと見つめ
薪は少しだけ眉を寄せる。


こんな無防備に。
穏やかな寝顔を。
僕は何度見たことだろう。


そう思いながら
あらゆる衝動の波が
押し寄せるたびに
心を律しなくてはと誓う。

だがその時は
どうにも抑えがきかなかった。


「鈴木、鈴木」と何度も声をかけたにも関わらず。

深い息を見止めて。僕は。
ついその眠りの深さに安堵して
自分の気持ちがいつもより大胆な
気持ちになっていたのかもしれない。





ーー


鈴木、鈴木・・と聞きなれた声に
心地よさを感じる。
このまま眠りについたらなんて
幸せだろう。

そう思いながら眠りにつきそうになった
その瞬間。


一瞬のためらいを
その空気に感じた後、

そっと優しく唇をなでるような
感触が伝わった。

そして、
その後息を止めたまま
近づくあいつの顔が
目を瞑っているのに見えたような気がした。

長いまつげが揺れた
気がした。


そのとき。
甘く優しい唇の感触に
引き寄せられた。


ずっと。
このままこの感触を
味わっていたい。
そう思いながらも、
愛おしくてたまらない。
こんなふうに気持ちが
入り込んだキスをされたら
何かが動き出してしまう。


そう思ったときだった。


ハッと我に返ったのか、
身体を離したかと思うと、
ドアを開けて駆けていく音がした。


俺は。
そのドアが閉まった音を確かめて
静かに起き上がる。



さきほどまでのあの感触を
指でそっとなぞりながら。


―――


はあ・・。

「なんてことを」

自分がしてしまったことを
思い返し、薪は洗面所の鏡を見て
ため息をつく。

そしてわざと荒く
顔を思いっきり洗った。

「これ使えよ」

と隣から差し出されたタオルを
思わず受け取り、
ああ、すまない。とその持ち主を見る。


何かあったのか。
と心配そうに見つめるのは
同期の長町だ。



「いや。ちょっと眠気覚ましに」
とタオルで顔を隠しながら
薪はふと思った。


「なあ、長町。お前の同室のやつ、
体調不良で今週末いないだろ。
今日お前のところで泊まってもいいか」


思わぬ申し出に長町は
ああ、もちろん。と即答する。

明日は土曜日で休日だから
朝練もない。ゆっくり寝ていられる。
いつも鈴木と一緒にいるこいつが
こんなことを言うなんてめったにないチャンスだ。


じゃ、部屋に行こう。
と薪を促すと薪はにっこり笑って言った。

「長町の鍵貸して。僕のはこれ」



―――


いや、朝起きたらお前が寝ていてびびった。

と鈴木は笑って言う。


「俺もだよ・・・」

とお互いに苦笑しあった。


―――


「鈴木!」
演習の終わった薪が
気付いたらしくこちらに向かって
声を上げている。


「ああ、薪すげー上達してんな」
と鈴木は極上の笑顔で返す。



じゃな。
と長町はそんな二人を見て
振り返りもせず寮に戻っていった。


結局。
鈴木と一緒にいる薪が好きなのだ。
ああいう笑顔や
信頼しきったその表情を
俺はいつも見ていたいんだ。

たとえそれが
誰に向けられていても。
俺は。





















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COMMENT 4

Thu
2016.04.14
07:00

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Thu
2016.04.14
23:47

柏木 けい #-

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Re: ありがとうございます!

鍵コメk様、こんばんは。

せっかくいただいたリクエストですし
そう言っていただいてよかったです。

長町さんを通して客観的な視線も入れてみました。

> 公式でも、薪さんと鈴木さんの学生生活とか、
> 新人警官時代とかもっともっと見たいですよね。

本当に心から思います~。
読めば読むほど思えば思うほど
もっと知りたくなる作品ですよね。
そう思うゆえに妄想でこんなふうに
書いてしまうのかもしれないです。

長編が思いつかないので
そうですね過去にさかのぼってみようかなあ・・
こんなふうに楽しみにしてくださる方がいると思うと
また創作意欲がわきます。
ありがとうございます♪

楽しみにしていてくださいね。

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Wed
2016.05.11
14:18

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Fri
2016.05.13
23:00

柏木 けい #-

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Re: 切ないです…

鍵コメE様、こんばんは。
コメント嬉しいデス!


いつも読んでくださって嬉しいです。
寮生活気になりますよね・・・。
私も大学時代寮生活だったので懐かしみながら書きました。

長町さんほどでなくてもきっと薪さんの周りには
そんな片思い男子がいっぱいいたはず・・とか妄想します。
うん、しかし長町さん、、切ない・・。

確かに鈴木→薪 公式ですね。
私もそう思っています。
だってあの鈴木さんの見ている薪さんのあの映像がすべてでは・・。
でもきっと薪さんだって・・ですよね。



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