明日目が覚めたら 僕は

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手紙その後

 20, 2016 19:25
青木が入院したその日には
福岡から彼の母と姪の舞が東京にやってきた。

薬で休んでいる彼の顔を見て、
安堵した二人の様子を岡部は横で見守る。

翌朝には薪所長が
入院先に現れ、福岡から来た二人に深々と頭を下げた。

しばらく東京に滞在することになった彼らであったが
青木の母が思わぬことを言った。

「薪所長、いつも息子が大変おせわになっております。
 よろしければこの後、ご一緒にお昼を召し上がりませんか?」と
何やら話したい様子だった。

一瞬躊躇したものの
せっかくの部下の母上の申し出を断る理由もない。
青木の母と舞そして薪の三人で近くのホテルのランチを
取ることになった。岡部が私も、と口をはさんだが、
薪がそれを制止した。

お子様ランチがあったかなと言いながら、
店の予約を波多野が手配している。


店につき、料理が運ばれてくると
青木の母は
舞は大変一行になついておりましてね。
と微笑む。

「その節は・・・」
大変申し訳ありません。とあの時の事件について
薪は改めて深々とこうべを垂れた。

「いえね、そんな謝っていただくとかね、そういうお話ではないのですよ」

一行が。
あなたを大変尊敬しているようでして。
いつも毎日あなたの話ばかりなのです。

舞にもね、それは楽しそうに嬉しそうにあなたの話をするものですから
すっかり舞もあなたのことを家族のように思っているみたいで。

とゆっくりと、しかし優しい口調で話す。

最初はね、第九と聞いてなぜそんな職場に。
と思ったものです。
でもね、雪子さんがね、おっしゃったんですよ。

「一行さんにしかあの仕事はできないと。そしてかれの心の支えはあなただと」

ね。
だからね、できの悪い息子ですが、
よろしくお願いします。
とまっすぐな目をして薪をみつめていた。

「マキさん、泣いてるの?」という舞の言葉で
そのとき薪は自分の涙に初めて気付いたのだった。


********


入院生活は約1カ月にわたった。
母も舞も学校があるからということで
数日滞在したものの一旦福岡に帰ってしまった。

その間の第8管区は、副室長を今井さんや曽我さんがフォローしてくれたという話を
後日岡部さんから聞いた。

それに。
入院した日の夜に薪さんは病室に駆けつけてくれたと後になってきいたが
あの日俺は薬で眠っていて、何も覚えていなくて。

俺はあの人にどこまで迷惑をかけてしまうんだ・・。
そう思うと少し気がめいった。

1か月の間は会議で東京に来た第九のメンバーが
お見舞いに来てくれて久しぶりの再会を楽しむこともできた。

そして
退院当日、
思わぬ人がやってきた。

私服姿の薪さんだった。


******

ど、どうしたんですか!?

余りのギャップに驚き声も上ずる。

「どうって、迎えに来たんだけど」
としれっとした顔で微笑む。


今日福岡に帰るんだろ。
空港まで送ってやるから。
と命令口調だ。

彼の私服姿を見ることはめったにないし、
車を持っていたなんて知らなかったし。
BMWだし・・・・

とにかくなんだかまだ夢冷めやらぬ感じで
ふわふわと彼の車の助手席に乗った。

今日はオフだから。
特別な。

といって笑う。
さっきからなんだか薪さんの笑顔がまぶしい。


ひとしきり今回の事件の詳細の話をして、
おまえは俺といるとろくな目に合わない。とも言った。

そんな彼に俺はこう言っていた。
「薪さん、いつかおっしゃいましたよね。あせらなくていい。待ってるから。。って。
ずっとあなたのそばにいたくて。一緒にいたくて。それが俺の望みなんです」と。

そういうと、薪さんは
呆れた、という顔をしながら運転をしている。

しばらく隣に乗っていてふと気付いた。

「薪さん、この車、どちらまで?羽田じゃないんですか?」

「・・・・。」

「チケットは僕が預かってる。お前を連れていきたいところがあるんだ」

覚悟を秘めた目をして彼は俺をまっすぐに見つめた。

「見せたい場所がある」

****


荻窪のとある住宅地に車は進んでいく。

そこに大きな日本家屋があった。
定期的に手入れをしていて、
最近まで知り合いに貸していたが
今は誰も住んでいない。と彼は言った。

表札を見ると
「薪」という名前が掲げられている。

家のカギを開けると
まあ、適当にくつろいでくれ。
そう彼は言って荷物を下ろした。

「普段はマンションに住んでいるが、この場所を売りに出すことができなくて。結局このままなんだ」と笑う。

客間に通されて中庭を見ると
余りの素晴らしさに声が出ない。
都心にこれだけの土地と屋敷があるとは。

「ここは僕が8歳のときから働き始めるまで過ごした場所だ。」
そう言って、柱に書かれた傷跡をなでる。
剛8歳、剛18歳、そう書かれている。
なんだかこんなに小さい頃の思い出が刻まれているのだと思うと
ほほえましい。

薪さんのご両親。
どんな人なんだろう。

「ご家族とここに住んでいらっしゃったんですね」
と言うと彼はかぶりを振った。

「いや。僕の両親は8歳のときに亡くなった。
両親の友人であった澤村さんに引き取られて、一緒に住んでいたんだ」

思いもよらない告白をされて動揺した。

そのことをどなたかご存知なのですか?
声が震えているのが自分でもわかった。

薪は和室で腰かけると
きれいに整った庭を眺めながらつぶやく。

「鈴木が知っていた。
僕の生い立ちも、澤村さんのことも。
そして澤村さんが僕の本当の父親だったことも。」

僕は、両親の死の真相を確かめたかった。
いや、澤村さんが犯人でないということを確かめたかった。

その言葉は、この人の人生を語るにしても
あまりに重かった。

それを知っていたという鈴木さんは。


「どうだ。こんな僕の家族になれるか?」
上目づかいでじっと俺を見つめている薪さんがそこにいた。

思いもよらぬ言葉に胸がざわざわした。

そうか、薪さんは僕の手紙を読んでいたのだと。
その言葉を聞いて確信した。


気がつくと俺は薪さんを思いっきり抱きしめ、そして思い切り泣いた。

*******

「この家を自由に使ってくれ。」

売却してもらってもいいし、
そのまま住んでもらってもいい。
あまり縁起のいい家ではないけれど、
ここで殺人が起こったわけではないし。
利便性もなかなかいいと思う。

お前も、福岡から来た時はここに泊まればいい。
それが僕がお前にしてやれる償いだ。

そしてお前の望むように
これからすこしずつお互いがわかるように
いろんな話をしていけばいいだろ。

お前は俺のいろんなことを知りたいみたいだからな。
そう言ってまた美しい横顔で微笑んだ。

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COMMENT - 4

Thu
2016.01.21
19:32

 #

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Edit | Reply | 
Thu
2016.01.21
22:42

柏木 けい #-

URL

Re: 家

鍵コメK様。
そうなんです。
青木君が薪さんのことを知りたいと
手紙に書いたとき、
最初に思い浮かんだのがこの家でした。
ここに来ればすべて説明ができそうな気がして。

そんな妄想をしてばかりなんですね。
わたしってば。

Edit | Reply | 
Sun
2016.02.28
03:40

 #

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Edit | Reply | 
Sun
2016.02.28
10:07

柏木 けい #-

URL

Re: 2人の未来にエールを!

鍵コメK様。
コメントありがとうございます。
そして改めてメッセージ本当にありがとうございました。

このお話は、
二人の家族の形ってどういう風に表現されるのだろうという興味と
想像から、それを形にしてみたくなったのがきっかけでした。

今回のメロディのお話を読んで感じましたが、
お互いの「家族」とは何か。
を知ることで歩み寄ってもらいたいと
切に感じます。


本当に。
二人の未来が
幸せに包まれるものであることを、
ファンの一人として願っています。




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