あと数カ月でパリを離れることになる。
暖かくなるにつれ、
そのカウントダウンが始まっているように
感じた。

それまで彼女とのことをはっきりしておきたい。
そんな思いが募っていた。

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ルクセンブルクの駅に降り立つ。

すると、彼女は会場に行く前に話しておかなくてはならないことがあるという。
車内でも、話しづらそうなことをどうやら切り出したいようだったが
ここまで来てさすがに言わないと、と思ったらしい。

駅を出てホテルまでは歩ける距離だったので、
街を歩きながら彼女が、あのね。と切り出す。

結婚式が終わり、小さな町を僕らは歩いた。
高低差が激しく、坂道がいっぱいだ。
岩肌の見える城壁のところまで
立って僕たちは町を見下ろす。
すごい景色だね。

この城壁に守られてきたのね。
ここは。と彼女は言う。

遮るもののないこの場所に立つと、
日差しがまぶしく
照らされる彼女もまぶしそうに仰ぎ見る。


本来ならもっと前から、
これからのことを
話し合っておくべきだったのかも
知れない。

いや、説得しようと。
日本に一緒に帰ろうと。
僕は勝手にそう決めていた。

それなのに。

彼女が僕と離れることを
厭わないと思っていることに
少なからずショックを受けた。

彼女の中での僕の存在の軽さを
見せつけられた気がした。


不安そうな顔で僕を見る。
僕は彼女の体を静かにおこしながら
今日の夕食は
ルームサービスをとるから
それまでゆっくりおやすみ。

そう言って彼女の髪を優しくなでる。

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